リワークプログラムの目的②(セルフモニタリング)
目次
なぜ、セルフコントロールだけでは不十分なのか?
前回、双極性障害(躁鬱病)は躁状態の強さをコントロール出来るようになれば、鬱状態の強さをコントロール出来る可能性が高まり、そのためにはセルフコントロールが重要である、しかし、それだけでは不十分である、とお伝えしました。
いったいなぜでしょうか?
確かに、セルフコントロールを学べば鬱状態や躁状態になった時に、有効な対処を行うことができるかもしれません。
しかし、自分が「鬱(躁)状態だ」と明確に分かる時というのは、もう既に鬱(躁)状態が強くなっている可能性が高いです。
つまり対処が遅くなってしまい、結果的に「強い鬱状態や躁状態を防ぐ」ことにはならないことが考えられるのです。
それでも何も学ばず、今まで通り自分の気分のままに過ごすよりは、鬱状態からの回復も早く、強い躁状態を徐々に落ち着けることもできるようになるかもしれません。
では、もっと早く気付くためにはどうすればよいのか。
その答えが自分の状態の監視(セルフモニタリング)なのです。
セルフモニタリングとは?
セルフモニタリングとは、自分は今、どんな状態かを把握することです。
私が通っていたクリニックではセルフモニタリングが最も重要である、と教えていました。
しかし、「自分の状態を把握する」と言っても、具体的にイメージが湧かない方が多いと思いますし、先ほどの自分の状態が明確に分かる時はもう既に遅いのではないか、と思われる方もいると思います。
大切なのは、自分が躁(鬱)状態の時に、何をしているか、何を考えているか、どんな感情(気分)でいるか、などの「自分の傾向をつかむ」ということです。
例えば、私の場合だと、以下のような傾向があります。
(鬱状態)
(躁状態)
- 動きの速さ せかせかと動くようになり、躁状態が強くなるとさらに早く、雑な動きになる。そのため、よく物にぶつかる。
- 他の人にイライラしやすい 相手の行動が遅いと感じやすくなる。
- 寝てもよく目が覚める 夜中に目がさめやすくなる。 など
このように自分の状態の傾向を示唆する行動や、体調、気分、思考内容の変化を「サイン」と呼びます。
サインには弱い躁(鬱)状態の時に出るサインから、強い躁(鬱)状態の時に出るサインまでさまざまあり、たとえば上記の鬱状態の時に出る「頭痛」のサインだと、たまに出るくらいなら弱い鬱状態のサイン、毎日出るようだと強い鬱状態のサインだととらえます。
弱いサインを拾えると、気づくタイミング、疑うタイミングを早くできます。
あるいは、「まだ弱いな」と気付くことで安心感につながることもあるでしょう。
(逆に、「まだ大丈夫」と思ってしまうのは避けたいですが・・・)
私が通っていたクリニックでは、サインを集めて点数化することでなるべく客観的に自分の状態を可視化することを教えています。
最初は、一番強い躁(鬱)状態の時を思い出してどんなサインが出ていたかを思い出してみるのがわかりやすいと思います。
サインを集めて、判断して、正解かどうかを判断してみる。
そうやってセルフモニタリングの精度を上げることが、リワークの大きな目的の1つでした。
セルフモニタリングとセルフコントロールはどちらも必要
このようにセルフモニタリングで早めに自分の状態に気づくことができれば、それだけ早めにセルフコントロールすることができので、強い躁(鬱)状態になることを減らせて、安定につながります。
そして何より「いつまた不安定な状態になるのか」と不安な気持ちになることを減らすことになり、自分自身の人生を少しでも豊かなものにできるのではないかなと思います。
以上、リワークプログラムの目的②(セルフモニタリング)でした。